世界記録を出すトップランカーは頭の中で何を考えているんだろう?
このような疑問にお答えします。
この記事では、
- 世界記録保持者と使用ルービックキューブ
- 世界記録発生時の手順と考え方
これらについて解説します。
どうして6面がバラバラな状態のルービックキューブが、たったの5秒弱で全て揃えられるのか・・・?
その神業とも言える完成までの秘密を解説します。
2023年現在のルービックキューブの単発世界記録は、2018年11月の中国大会で「Yusheng Du (杜宇生)」選手が叩き出した「3.47秒」となります。
この記事で紹介するのは、それより一つ前の「Feliks Zemdegs(フェリックス ゼムデグス)」選手の「4.22秒」の記録になります。
ルービックキューブ世界記録誕生の瞬間
まずは、世界記録誕生の瞬間を動画で見て下さい。
指さばきが早すぎてよく分かりませんが、あっと言う間の出来事です。
世界記録を出さんとする周囲のライバル達も、一緒に祝福するこのムードが良いですよね。
ルービックキューブという競技は、みんなが切磋琢磨していて素晴らしいです。
世界記録保持者はこんな人
ルービックキューブ(3x3)の単発世界記録「4.22秒」の記録保持者はこんな人です。
- 名前:Feliks Zemdegs(フェリックス ゼムデグス)
- 国籍:オーストラリア
- 年齢:1995年12月20日生まれの28歳
YouTubeに自ら動画をアップしており、すごく好青年な印象です。
初めてルービックキューブを買ったのが2008年で、その2カ月後には平均タイム19.73秒を出していたそうです。
恐ろしや・・・。
ちなみに私がルービックキューブを始めてから2カ月の時は、40秒が安定してきたところでした。笑
使用されたルービックキューブ
フェリックス氏が「4.22秒」を出した時に使用していたルービックキューブがこちらです。
「GANCUBE」の「GAN356 Air SM」です。
大きな特徴としては、
- 回転の強弱をバネで調整できるので「指一本で回せる」
- キューブの角が多少ズレていても強引に回せる「コーナーカット処理」
- 回転がピッタリ止まるようにアシストしてくれる「磁石内蔵」
これらの機能を有する当時の最先端ルービックキューブでした。
今となっては少し旧型となります。
当時は私もすぐにこのキューブをAmazonで購入して、長い間メインキューブとして使用していました。
2023年現在では、このルービックキューブの最新モデルである「GAN13 Maglev」が世界最高性能を誇っているルービックキューブとなります。
最新ルービックキューブの比較はこちらの記事にまとめてるので、気になる人は是非。
-
【ルービックキューブおすすめ】初心者から競技用まで【2023年5月最新】
多少値段は張りますが、世界記録保持者と同じルービックキューブがネットで買える時代です。
解き方は「CFOP法」を使用
ルービックキューブは毎回やみくもに揃えているわけではありません。
効率よく揃えるための「解法」がいくつか存在していて、その解き方に則って揃えています。
その中でも最速と言われている解法が「CFOP法」という解法です。
実際に世界記録を出した時、フェリックスも使用していました。
4.22秒の秘密を知るためには「CFOP法」を簡単に理解する必要があります。
工程 | 暗記パターン |
Cross(クロス)を揃える |
暗記不要 |
F2L:下の2段を揃える |
41パターン |
OLL:上段の向きを揃える |
57パターン |
PLL:上段の位置を揃える |
21パターン |
合計 | 119パターン |
このような4つの工程で揃えています。
れぞれの工程の頭文字をとって「CFOP法」と呼ばれています。
揃えていく際は、手元のルービックキューブの形を把握して、CFOP法で定められている回転パターンを回す事でキューブが揃っていきます。
CFOP法でキューブを揃えるためには、全119パターンの暗記が必要になります。
しかも、ただ暗記すれば良いわけではありません。
パターンを暗記する時は、揃えたい場所を自分の正面に持ってきて回し方を暗記しますが、実際に揃える時に何度もキューブを持ち替えていてはタイムロスになります。
なので、キューブの向きがどっちを向いていても揃えたい所を揃えられるように「裏F2L」といったテクニックも必要になり、実際に使用されるパターン数はもっと多くなります。
世界記録時の実際の解き順
まず、ルービックキューブの記録会の流れはこんな感じです。
- ①運営側がスクランブル(ルービックキューブを崩すこと)をする。
- ②競技者は15秒間のインスペクションタイム中にキューブを確認する。
- ③両手をタイマーに置く。
- ④ルービックキューブを揃える。
- ⑤両手をタイマーに置く。
4.22秒というのは③~⑤の間のタイムを指しています。
スクランブル
「L U2 D R' F2 R2 L2 U R' F' D2 F2 D2 B U L2 B2」
これはルービックキューブが揃っている状態からどのように崩したかを表しています。
回転記号だと分かりづらいので画像だとこんな感じです。
フェリックス氏はこの状態からキューブを揃えていきます。
インスペクションタイム
キューブを揃え始める前にスクランブルされたキューブを最大15秒間、確認する事ができます。
冒頭の動画ではインスペクションタイムから始まっています。
この時点でフェリックスは頭の中で「先読み」をしています。
①Cross
「F' R' D' R y R U' R' u'」
一番下の段の4つのブロックを揃えます。
ここでちょっとした技が使われています。
4手回した時に、下段の四隅の一つが正しい位置にいたので、Cross中にF2Lを一つ揃えてしまっている(X-Crossというテクニック)
②F2L
下段と中段の四隅を揃える工程です。
1stペア:Cross中に完了済み
2ndペア:「U' R U R'」
3rdペア:「y' L' U2 L U' L' U L」
4thペア:「U y' U R' U' R U R' U' R」
何度か持ち替えをしていますが目にも止まらぬ早業です。
ここでは特に変わったポイントはありません。
③OLL
上段に黄色を揃える工程です。
U' R U2 R2' F R F' R U2 R'
ここでも特に変わったポイントはないんですが・・・。
OLL完了の時点で、PLL工程を飛ばして全面が揃ってしまいました。
これは「PLLスキップ」という事象です。
④PLL
なし(※OLLの時点でルービックキューブ完成のため)
秘技:PLLスキップ
通常時の発生確率
CFOP法は6面完成まで全部で4工程ありますが、出現するパターンによっては工程がスキップされる時があります。
例えば今回のような3つ目の工程であるOLLを回し終えた時点で、6面全てが完成しているパターンです。
単純にPLLがスキップされる確率はこんな感じです。
全21種のPLL名称 | パターン数 | 発生確率 |
Ga、Gb、Gc、Gd | 16/72 | 約22.2% |
Ua、Ub | 8/72 | 約11.1% |
Aa、Ab | 8/72 | 約11.1% |
Ra、Rb | 8/72 | 約11.1% |
Ja、Jb | 8/72 | 約11.1% |
V | 4/72 | 約5.6% |
F | 4/72 | 約5.6% |
Y | 4/72 | 約5.6% |
T | 4/72 | 約5.6% |
Z | 2/72 | 約2.8% |
E | 2/72 | 約2.8% |
Na、Nb | 2/72 | 約2.8% |
H | 1/72 | 約1.4% |
Skip | 1/72 | 約1.4% |
ルービックキューブを72回揃えれば、そのうち1回は「PLLスキップ」が発生する計算になります。
揃える工程が1つ無くなるので好タイムが出やすくなります。
意図的に出すトップキュービスト
ですが、フェリックス氏の動画を見ていて納得のいかない点がありました。
それは「OLL完了からタイマーを止めるまでが早すぎること」です。
OLLを回し終えた時にルービックキューブが全面揃っているのは、ある意味「不測の事態」です。
なのに、初めからOLLの後にPLLスキップが発生するのが分かっていたかのような速度でタイマーを止めています。
そこが気になって色々と調べてみたら・・・。
なんと「OLLCP」というさらに難易度の高い手順が存在するそうです。
「OLLCP」とは、OLL前のキューブの位置と向きから一撃で6面を揃える手順のことです。
ただし、OLL57パターンとPLL21パターンの組み合わせになるので、暗記量が尋常じゃないくらい増えます。
フェリックス氏が全てを暗記しているのか定かではありませんが、この時はPLLスキップを確信して揃えていたと思います。
つまり、フェリックス氏は「OLLCP」という技術でPLLスキップを「意図的に発生させて」世界記録を叩き出しました。
ルービックキューブ世界記録のまとめ
この記事では、3x3のルービックキューブの単発世界記録「4.22秒」について解説しました。
もちろん、ルービックキューブは高性能な最新モデルを使用していますが、本質はそこではありません。
記録保持者フェリックス氏が最速でルービックキューブを揃えるために持っている秘密の能力がこちら。
- CFOP法の119パターンを覚える暗記力
- 頭の中で先読みする想像力
- 高速で回転させるための指の器用さ
- 一瞬でキューブの位置と向きを把握する観察眼
- PLLスキップを意図的に引き起こす手順の超暗記力
世界記録を出したフェリックス氏の動画は、一見すると簡単に揃えたように見えます。
しかし、実際は指だけでなく頭の中も高速回転させていたわけです。
今回は世界記録というトップキュービストの話をしましたが、ルービックキューブは練習すれば誰にでも揃えられます。
興味がある人はこちらの記事を参考に解き方を覚えてみて下さい。
-
【ルービックキューブの揃え方】初心者が簡単に最速で攻略する手順や解き方のコツを解説